セールススキルの研修において、「返報性の原理(Reciprocity Principle)」について学ぶ機会がありました。
これは、私が非常に好んでいるインテグリティセリングの提案プロセスの中で、第4段階「実証」の際に顧客が示す反応に関連しています。
この原理は社会心理学の概念としても知られています。
私が意図的に「付加価値を提供する」というアプローチを取った際、顧客が何か良いことを受けたと感じ、それに対して何らかの形で返したいという心理が働くのです。
この心理は多くの人に影響を与えるとされていますが、一部の非常に利己的な人々には効果がないこともあります。
それは当然のことかもしれません。
時には、提供しようとしている付加価値がその人にとって適切でないために、何の反応も得られないこともあります。
そのような場合、個人のニーズを十分に理解していないと、提案が響かないことがあります。
そうした時は、諦めずに最初からやり直すことが大切です。
つまり、実証の段階に入る前に、適切なアプローチやインタビュープロセスを通じて、適切な情報をしっかりと収集することが重要です。
表面的な会話に留まらず、問題解決者としての役割を果たすことが求められます。
私が独身時代には、アメリカやアジアを頻繁に旅行していました。
当時はホテルの料金も現在より安かったため、可能な限り高級ホテルに宿泊していました。
養育費や家計の無駄遣いに悩むこともなく、経験に対する投資を惜しまなかったのです。
安宿を好む友人と旅行した際も、高級ホテルに宿泊するよう説得しました。
ホテルの予約システムは、日本とは異なり、人数ではなく部屋数に基づいて料金が設定されているため、同じ料金で広い部屋に宿泊できることが多く、これが非常にお得でした。
現在の料金システムがどのようになっているかは分かりませんが、当時はこのような状況でした。
高級ホテルの上質な部屋に宿泊すると、特別な扱いを受けることができ、私はそれを大変楽しんでいました。
しかし、現在は経済的な状況や他の選択肢を考慮し、お得な時期を狙って中級ホテルに宿泊することが多くなりました。
独身時代に頻繁に利用していたホテルでの体験を一つご紹介します。
チェックイン時に受付の女性から「お部屋に素敵なプレゼントがございます」と言われました。
当初は、ベッドに置かれた無料のぬいぐるみのようなものを想像していましたが、部屋に入ると驚きました。
ペントハウスに宿泊した経験がなかった私には、その広さが信じられないほどでした。
ミーティングルーム、バルコニーには庭とソファ、デッキチェアなどがあり、非常に豪華でしたが、少し落ち着かない気持ちもありました。
滞在期間をもっと長くすればよかったと後悔しました。
各部屋をチェックしていると、前回の宿泊時にホテルマネジャーからインタビューを受けたことを思い出しました。
その際、「このような豪華な部屋に宿泊したい」とコメントしていたのです。
海外の高級ホテルや航空会社では、顧客のロイヤリティを保つために、頻繁に利用する会員に対してこのようなサービスを提供することがあります。
私の経験も、恐らくはロイヤリティプログラムの一環だったのでしょう。
この体験を通じて、私はそのホテルに対して深いロイヤリティを感じるようになりました。
アメリカの航空会社でも、何度かエコノミーからビジネスクラスへのアップグレードを経験しました。
これらの素晴らしいオファーにより、今でもその航空会社を優先して利用しています。
日本ではこのような経験はありませんが、他のステータスが高い会員には提供されているかもしれません。
最終的に私ができるお返しは何か、という意識が自然と芽生えました。経済的な問題や他のホテルの圧倒的な利点がない限り、このホテルや航空会社を選択することがそれです。
そして、これは子供が生まれるまで続きました。
ホテルが「返報性の原理」を利用したのかもしれません。
しかし、意図的に親切な行為をしてもらったり、サプライズを用意されたりすることで、私は喜び、無意識のうちに相手(ホテル側)が喜ぶであろう行動を一定期間続けました。
この原理は非常に有効だと感じています。
なぜ、この原理を妻に対しても利用してこなかったのか、と考えることがあります。
彼女は決して利己的なタイプではないはずですので、試してみる価値はあるかもしれません。
しかし、長期間の信頼関係の希薄化がある場合、彼女は耳を傾けないかもしれません。
試すことに少し不安を感じています。